1. 名前
「Web3」というナンバリングで定着しているのがすごい。
Web3になってることで本来別の文脈であるWeb 2.0と同じ正史の土俵にある概念のように受け取られているし、Web1→Web2→Web3のようなメタファーでストーリーが構築できている。
Web1 | Web2 | Web3 |
---|---|---|
Read | Write | Own/Join |
HP | SNS | DApps/DeFi |
GAFAM | DAO |
という対比をよく見かけるけど、僕の視点だと以下になる
Web 1 | Web 2.0 | Web 3.0 | Web3 |
---|---|---|---|
2004年 | 2006年 | 2014年 | |
ない | 当時流行っていたサービスの総称 | セマンティック・ウェブあげるよ | ブロックチェーンで何かサービス作れない? という話題 |
3の命名はParityのギャビン・ウッドとされているが、今の文脈とどの程度地続きなのかは定かでない。ただWeb 3.0にしなかったところにWeb 2.0シリーズではないよというこだわりを感じる。(追記:単にティム・バーナーズ=リーの3.0の命名と被るからというのが理由かもしれない)
最初にWeb3の名前を知ったのはweb3jsというnpmモジュールだった。全然予備知識がなかったので何か革新的な取り組みなのかと思って、取り敢えずインストールして使ってみて「お前イーサリアムだろ!」と思った記憶がある。
WebXシリーズはあっという間に埋まってた
Ethereumが革新的な取り組みなのが言うまでもない。その時にGETHやParityも知って、ついでにRustの活用事例にも出会えた。
ところでTim O’ReillyはWeb3について「oreilly.comのサブスクで基礎となる技術を学ぶことができます」と述べている(本質だ……)
2. タイミング
コロナ禍以降に急激に認知度を広げたのがすごい。
いたるところでWeb3というキーワードを見かける。ブロックチェーンの話題自体はそれ以前より事欠かなかったというのに。
「ブロックチェーンってインターネットじゃね?」っていう言い方は、僕は『ブロックチェーン・レボリューション』という本で最初に見た記憶がある。たしかにそうですね、ぐらいの感想を持った。
自分がビットコインの存在を知ったのはマウントゴックス事件のあった2014年ぐらいだったと思う。
当時スマホ決済関連のソフトウェア開発をしていて「次のロードマップに入れる決済手段」を議論していた時に当時レジュプレスという名前だったコインチェックが提供するビットコイン支払いを採用するのはどうかという話があった。
当時のビットコインは僕らのまわりではかなりオモチャ枠の技術で、ビジネスの現場に導入するという話に当初ギャグっぽさを感じたのだけど、POが「これは実現するなら最もインパクトがあるので真面目に検討する価値がある」と言っていてスタートアップ的な発想だなと共感したので強く印象に残ってる。
Web3という言葉をブロックチェーン界隈以外でよく見かけるようになったのは、僕の場合2020年以降の「Off Topic // オフトピック」というポッドキャストでだった。
podcasts.apple.comその背景としてアンドリーセン・ホロウィッツのクリス・ディクソンのCoinbaseへの投資の成功が、2020年以降のWeb3の隆盛に関わっていそうだなと認識した。
あとSolanaについては「Today I Learned」というポッドキャストで知った。
podcasts.apple.com3. 経済性
ユーザーから見たすべての行動が経済活動になっている点がすごい。
Web3じゃなくても広告見たり商品買ったりしたら経済活動やろ、と思うかもしれないけどユーザーが「儲かるかも!?」という期待を元に取る行動のことを指しているのでより範囲が広い。
エロゲーは、ゲームの面白さとエロ絵を見たいという二軸でユーザーの興味を惹きつけられる。
— ひろゆき (@hirox246) 2022年5月28日
んで、Web3はサービスの面白さと、儲かるかも!?という期待感の二軸を作れたサービスは上手くいくと思ってるおいら。 https://t.co/OS0MFfK0vV
例えば現金に換えることができるポイントを他のユーザーを紹介して獲得するという直接的なインセンティブはWeb3に限らず実現されているけど、暗号資産○○やWeb3サービス△△に対するポジティブな意見を発信し続けることで、自分が持っているトークンの価値が上昇して「儲かるかも!?」という期待を元に、ユーザーたちがWeb3サービスの宣伝を自発的に繰替えしていたりする(ネットワーク外部性的な)。
開発者として「App Storeでアプリを販売して儲かるかも!?」と考えることはよくあったんだけど、ユーザーとして儲かるためにアプリを選ぶ使うということを第一に考えたことがなかったのでその考え方自体が自分には新鮮みがある。
ユーザーとしては本来消費者なので、金か情報を出して娯楽や便利を受け取る、という世界観だった。
似た感覚としてはWeb 2.0の時代にはじめてAmazonアフィリエイトを使った時の「ブログ書くだけの消費者なのに報酬が頂けるんですか〜〜?」というのに近い(今日では一般的な広告ビジネスなので違和感はないけど)。
ただこれには負の側面もあり、ほぼ負の側面かもしれないけど「技術に関心ないけど技術的な用語を使って価値を煽る」とか「そのみんな紹介しているWeb3サービスは実際誰も利用していないのである」、はては「他トークンと利益を奪い合うために攻撃するインセンティブもある」等の問題がよく起きていると思う。
他方、ここは魅力を感じていない
巨大プラットフォームからの開放
Web3の解説でよく「現在のWebはGAFAMにあなたの個人情報を握られ搾取されています。非中央集権化することでこの問題を解消しましょう」というストーリーが出てくるが、論理構造が逆だと思っている。
「できること」から見たそれができない場所を探しているアプローチで、ニーズの定かではない非中央集権化をイシューにするように誘導している。
巨大プラットフォームが槍玉に上るのはブロックチェーンではないもので一番シェアの高いものであるし、反トラスト法関連で時流に乗っていて迎合しやすいからだと思われる。
Web3ユーザーとしては「InfuraやAlchemyなどのエンポイントに接続不能になったら自分で別のノードに接続するように再設定したい〜〜」と思ったことはまだない。
パスワード不要
Webのカスタマーサポートに携わったことのある人なら問い合わせの多数が「パスワード分からん」みたいな状況に立ち合ったことがあると思う。
認証がなんとかならない時になんとかしてくれそうな第三者の存在はありがたい。
僕はMetaMaskのニーモニックをこの先もがんばって保持して運用できていく自信がまだない。
日本復活
国を上げて新興産業としてのWeb3に関わりブチ上げていくぞ、みたいなムーブがよくあると思う。
投資すべく実際に予算が通されているのかは知らないけど既得権益も薄いし、取り組むのに莫大な資金がかかるわけでもないだろうから歓迎すべきなんだろうけど、日本復活のためにそれを優先すべきかというとそうは思わない。
日本復活というか現状維持を実現するための経済施策の1つという位置付けなのかもしれない。そうであるのなら現状維持を目指すのではなく、すでにある資源を使って国民が幸福に過す、他人への要求水準を下げ、他文化の人を受け入れ、自殺者やうつを減らしという部分に重点を置いて欲しいと願っているのだけど、まぁそれも経済ブチ上げたらなんとかなるぞと頭のいい人たちは考えているのかもしれない。
ただブロックチェーンのプラットフォーム側やシビテックを地道にやっていっている人たちは国と関係なくグローバルに報われて欲しい。僕のTwitterリストにはブロックチェーンの技術の話題を中心にする人(ネットワーキングだけをする人を区別するため)を登録するリストがあってそこで彼等の活動を追い掛けている。
情報開示
著者にはWeb 2.0が台頭していた時期に「ウェブ進化論の梅田望夫が恐竜のロングテールを振り回して暴れる」といった内容のショートストーリーを公開していた過去があります。