Tauri とは
Electron代替として作られたRust製のGUIアプリケーション開発ツールキット。
ユーザーは各プラットフォームのWebViewで動くHTML+JavaScriptでUI開発をして、裏側はRustで書いたネイティブバイナリにコンパイルされるプログラムを呼び出す。
実際の実装のイメージが以下で、Electronに使い方は似せられている。
Electronは特製ChromiumとNode.jsをユーザーのアプリケーションに同梱することでポータビリティを担保させているのに対して(find /Applications -name "Electron Framework.framework"
コマンドを実行してみると大抵どんな環境にもElectronが10匹ぐらい居る)
TauriはOSが用意しているWebViewにリンクして、スクリプトもネイティブバイナリにするので早くて軽い、というアーキテクチャのようだ。
GUIツールキット界隈ではこのようにプラットフォーム側かエンジン側のどちらに寄せるかという選択自体はよくあり、プラットフォームや動作環境の差異で挙動が変わったり、安定するかわりに成果物が重くなったりと一長一短の歴史ではあった。
ここ何年かの変化としてはWindowsのバージョンシェアやWebView開発環境が一新されてレガシーに引きずられることがなくなったという部分がある。
あとGoやRustのように依存が少ないシングルバイナリをクロスコンパイルできるツールの発展もTauriが出てきた背景としてありそう。
時系列的にはこうだと思う。
製品 | 時期 |
---|---|
Electron | 2013年 |
Tauri | 2019年 |
WebView2 | 2020年 |
そしてElectronはApp Storeレギュレーション的にiOS版ビルドを吐くのは難しそうだけど、Tauriならできそうというわけでモバイル対応が進んでいるらしい。
WRYとは
このディオ・ブランドーみたいな名前のコンポーネントはWebView Rendering librarYの略で、WebViewで動くアプリケーションとバックエンドのブリッジとして機能しているらしい。
内部的にさらにtauri-apps/taoというコンポーネントと組合せてWebViewに任意URLを与えて直接Windowを持つアプリケーションとして実行できるようになっていた。
https://github.com/tauri-apps/wry-mobile というリポジトリも作られているが更新されていなく、モバイル系の開発はどうやらtauri-apps/wryの方からリンクされているHackMDページに情報があるらしい。
このドキュメントからさらにリンクされているのが cargo-mobile というツールで。gomobileのようなモバイルアプリ向けのビルドをサポートするツールのようだ。
cargo-mobile
なぜかこっちも分裂していて、さらにそれぞれのリポジトリでコミットされている。
すこし眺めてみたところ、オリジナルとTauriメンテナのwusyongさんによるフォークという関係のようだった(wry-mobileのドキュメントからリンクされているのはwusyong/cargo-mobileの方。)。
TauriはもともとRust界隈のやる気勢たちによってコミュニティでメンテナンスされているが、モバイル対応をメインでやっているのはwusyongさんだけだった(モバイル開発まわりには明るくないらしい)。
あくまでも検証中の段階らしく、IPCの動作の確認とシュミレータ向けのビルドやデバッグをしていることが分かる。
tauri-apps/tauri
tooling/bundler/src/bundle/macos/ios.rs
アプリケーションのバンドル化のコードにmacos->iosがあることが分かる。
iOS SDKとのインテグレーションがあるというわけではなく、アセットファイルの生成ぐらいの処理が定義されている。
2021年に最初にコミットされたバージョンからあまり変更がなかった。
tauri/tooling/bundler/src/bundle/settings.rs
ビルドできるバンドルの種類。Androidの定義はなく、apk,appbundle,ipaなどのフォーマットに関するコードも今はない。
/// The type of the package we're bundling. #[derive(Clone, Copy, Debug, Eq, PartialEq)] #[non_exhaustive] pub enum PackageType { /// The macOS application bundle (.app). MacOsBundle, /// The iOS app bundle. IosBundle, /// The Windows bundle (.msi). WindowsMsi, /// The Linux Debian package bundle (.deb). Deb, /// The Linux RPM bundle (.rpm). Rpm, /// The Linux AppImage bundle (.AppImage). AppImage, /// The macOS DMG bundle (.dmg). Dmg, /// The Updater bundle. Updater, }
分かったこと
ここまで書いたけど単にWebViewで動くHTML+JavaScriptでアプリ開発をしたいだけならIonicを使うのがいいと思う。
Rust好きやデスクトップアプリケーションとの共通化を見据えてTauriの開発に参加したい人にはフィットするかもしれない。