チンさん殺人事件

ギャー


「アイヤー! たいへん! チンさんが出入り不可能な密室内で殺されてるアル!」
「タオさん! 急いで名探偵ミンメイを呼ぶアル!」


ドルンドルルルン
「はじめまして。名探偵ミンメイ アル。こちらは助手のワンさんアル」
「……」
「ワンさんは寡黙アル。先日の『回転テーブル城殺人事件』ではついには一言も話さなかったでアル。でも頭の中では至極論理的な推理をしているアル」
「……」
「そんなことはいいからはやく犯人を捜すアル」
「わかったアル。――では座禅を組んで、瞑想によって推理をするからしばし待つネ」
(ぽく ぽく ぽく ぽく)
(ぴこーん!)
「わかったアル! 犯人は私ネ」
「なッ……! 名探偵ミンメイがチンさん殺したアルか!?」
「そうアル」
「なんで殺したアル」
「殺人事件が起きないと作者のホン・ソンキンが小説を書けないからアル」
「ふむ。では、どうやって密室に出入りしたアル」
「実はダイニングのテーブルの下に地下室への通路があるネ」
「ふむ。そこを通ってチンさんの部屋に出入りしたのでアルか」
「いいえ、そこは暗くて怖いので、生まれながら持っているサイコキネシスでチンさんの部屋のドアを粉々にして、後からサイコキネシスでドアを元通りにしたアル」
「ふむふむ」
「ちょっと待つアル! そもそも名探偵ミンメイは、外は大吹雪、吊り橋は何ものかによって壊され、絶海の孤島にあるここクーロン島へどうやって出入りしたアル。島へ着いた時にはわれわれ以外の人間が居ないのは32ページあたりで記述されてるでアル」
「チンさんと私は双子なので、数日前にチンさんを殺してこの島へ瞬間移動で運んで、出港時にはわたしがチンさんのフリしてたアル」
「ふむふむ」
「思い出したアル! 確かチンさんは、この世のありとあらゆる手段をもっても死なない身体だったはずアル。どんな凶器を使ってどんな手段で殺したネ!」
「『この世のありとあらゆる手段を持もっても死なない身体の人間が絶対死ぬクスリ』で殺したアル」


一同「それなら納得アル」


「……QED
「ワンさんが喋ったアル!」


ザザーン
ドルルンドルルルン