黒田研二『ウェディング・ドレス』

前知識

著者の黒田研二は「くろけん」のHNで、古くからニフティのフォーラムや、個人サイト「KUROKEN's Mystery Museum」で活動している人らしい。いわゆる「その筋の人」

ストーリー


純愛か裏切りか。結婚式当日の凌辱から、わたしとユウ君の物語は始まった。そして「十三番目の生け贄」という凄絶なAV作品に関わる猟奇殺人。ユウ君と再会したとき、不可解なジグソーパズルは完成した!全編に謎と伏線を鏤めた新本格ミステリの快作、驚嘆の魔術師・黒田研二の手で、メフィスト賞に誕生!第16回メフィスト賞受賞作。

気持ち悪く騙された気がする

大森望曰く「キャラ立ちなし、蘊蓄なし、洒落た会話も気のきいたジョークもなし。すべてが謎とトリックに奉仕する、体脂肪率0パーセントの新本格」とのこと。確かに。主に謎と伏線でぎっしり詰まっている前半は不思議でしょうがなかった。男女の語りが平行して交互に展開していくのだけど、話がズレまくりで「パラレルワールドに迷い込んだかのよう」。作中で実際にそう書いてあるから、そんなズッコケ落ちはないなと思ってたんだけど、この広げすぎた血まみれの大風呂敷をどう畳むのか気になってしょうがなかった。予測で、少なくとも●●トリックが入ってくるのかなとか、でも多重人格オチだけは萎えるからやめてくれ、とか思っていた所にラストのネタばらしこと披露宴こと説明台詞の大強襲でお腹いっぱい。読み終え振り返ると、なんとも謎の陳列と棚卸し作業に忙しい、まるでスーパーマーケットのような作品であった(この喩えはアリなのか)。いわゆる「バカミス」とかではなく、正統派のドンデンが好きな人は読んでみて下さい。といっても結構ギリギリ(アウト)な線だけど。特に密室トリックとかはそれ単体で一作やってしまうと、非難囂々のものだけど、まぁこんだけ詰め込んだ中にあっては許せてしまう。
しかし読んでる最中一番気になったのは「著者近影」。「結婚」とか「純愛」とかに結びつかない。著者もこう言っている

この物語を書くにあたって、女性向け結婚情報誌を恥ずかしげもなく大量に買い込み、教会の回りを不審者のごとくうろゆき、ドレス姿の花嫁を見つけてはストーカーのように追いかけ回しておりました。

作家って大変だなー、と思う。労作。
【3】

ウェディング・ドレス (講談社ノベルス)

ウェディング・ドレス (講談社ノベルス)