原りょう『そして夜は甦る』

ルポ・ライターの失踪、怪文書、東京都知事狙撃事件…。西新宿に探偵事務所を構える沢崎が立ち向かう難事件の背後には巨大な陰謀が隠され、鮮やかなラストシーンに向って物語はスピーディに展開してゆく。レイモンド・チャンドラーに心酔する、ジャズ・ピアニストの著者が2年の歳月をかけ完成させた渾身の処女長篇。いきのいい会話と緊密なプロットで贈る、期待の本格ハードボイルド登場。
原りょうに、というよりハードボイルド小説に過度な期待をかけすぎたかもしれない。なんか俺は未知の世界へ旅立とうとしていた。確かに、ラストまでぐいぐい読ませるある種のチカラは感じたが、いまいちこの作品の世界に入り込めなかった。
思うに、俺らの世代(八〇年代〜生まれ)ってのは「ハードボイルドな世界」を歪んだ形で享受してしまっているのだ。おそらく、俺らより上のおっさん世代が若い頃に「こういうもの」がもてはやされる(カッケー)時期、バブル期があったはずだ(シビぃ)。若いおっさんはみんな松田優作ヘアーと化し、太陽に吼えた。その時期が一段落した後、俺らがお茶の間の占有者となった時にはトレンディの波が来て、カンチに関知する場合だった。本格なハードボイルドというのはとうに消え去っていて、下世話なバラエティ番組で「それっぽい設定」としてだけ残っていた。探偵役の加トちゃんの頭にいつタライが落ちてくるのか、ケンちゃんは今回もネグリジェのババアに追いかけ回されるのか。俺が、能條純一哭きの竜』を大爆笑漫画として捉えているのはその為だ。
さて、シリーズとして続いているらしいけど、どうしたものか。今回読んだのは、いろんなサイトで「原りょう作品(沢崎)マビぃぜー」の声を聞いたからなのだけども。とりあえず保留しておこう。
【3】
そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))

そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))

石田衣良の『池袋ウェストゲートパーク』シリーズはハードボイルド小説の骨組みで書かれていたんだな。受け取る順番が逆だろ、とは思うがなんとなくかぶった。