ポール・オースター『ムーンパレス』柴田元幸/訳

P・オースターの自伝的青春小説、らしいよ。なぜこの本を手に取ったのかというと、僕の好きな作家である佐藤友哉が作品中で度々名前を出してくるからです(ごわす)
主人公のマーコ・フォッグが学生時代の思い出や廃人時代の思い出を延々と語っているかんじの物語。とにかく展開が早く、様々な出来事が次々と起こりマーコ周辺がドタバタしていく。身よりの人間が全員おっ死んだマーコは極貧生活を送ることになり、読書家の伯父から譲り受けた書物を延々読み耽り、読了したものを売却し生活資金を得る。その僅かなお金も底を突いたマーコは、住んでいたアパートも追い出されホームレス生活を送ることになった。この頃のマーコ先生のキレっぷりがすさまじい、福本伸行作品に出てくる精神的破綻者を地でいってるかのようだ(やんす)そして、中盤の「車椅子の偏屈ジジイ」とお話をする仕事に就いた辺りで物語はがらっと変わる。終盤は「血縁をめぐる冒険」から、ラストは大変なことになっているにもかかわらず、何ともいえん「走れ!!」的な締め。村上春樹とか好きな人にお薦め?
読み進めている時、ちょっと退屈だったが元々P・オースターの作品はこういう「何か起こりそうで、何も起こらない」というのが多いそうだ。この作品はP・オースター言うところの「コメディ」らしい。よく分からんが。
しかし「偏屈ジジイとの対話」ゾーンは面白かった。ジジイが"わざと"「べちゃべちゃ」と不快な音を立ててスープをすするシーンとか、非常に汚らしくて、漫★画太郎が描く老人がすぐ様思い浮かんだ。(そんなとこツッコムのはどうかな)まぁ「ジジイゾーン」で他に良かったところは「てめー名画を見てこい」の場面とか「雨の日」の場面とか良い。泣ける。いや泣ける?かどうかはよくわからん。村上春樹を読んだ時もそう思ったけど「ふっしぎー(小2)」な気分にさせる。他の人の感想で見たけど「感想を書くのが難しい」って意見には同意するべ。
読んだあと、この作品を一言で表すならってのを考えてて、「ありえねー冒険が始まる」ってのを思いついたんだけど、それより「俺の半生を淡々と記録していくよ」のがいい気がしてきた。まぁ、どっちもぱっとしないか。
あと、訳者あとがきを読んで知ったのだけど。「泣ける映画」で度々紹介される『SMOKE [DVD]』の脚本はP・オースターが自分でやってるんだね。今度見てみようと思う。

ムーン・パレス (新潮文庫)

ムーン・パレス (新潮文庫)