ATOKと大げんか

「てめーこら俺に使われてるくせに生意気なんだよ!!!!」
「だからー!!laisoくんは「の」のれんぞく使用が多すぎナノー!!」
(ガッシャーン)
側にあったゴミ箱をATOKに向かってぶん投げた。中にあったベビースターラーメンの食べ残しがこぼれ、そこら中に小ミミズのようなカスが散らばる。今日はATOKと大げんかをした。
コトの経緯はこうだ。

一時間前

「あのねlaisoくん。ちょっと言いにくいことなんだけどね。いつもlaisoくんの執筆活動をみているぼくだから言わせてもらうんだけどネ。」
「なんだよATOK、いやに前置きが長いじゃないか。さっさと話せよ。」
「うん。そうネ。まずね、laisoくんは最近までとくにお本を読んだり、作文を書いたりすることが全然なかったのはボクもよーく知ってるんだけどネ。あ、もちろん悪いコトじゃないよ。趣味なんて人それぞれだし。laisoくんがしばらくの間ゲームセンターだけにしか関心を示さなかったのを責めているわけじゃないヨ。」
「うっとおしいやつだな。でなによ?」
「うん。うん。それでネ、laisoくんが最近がんばってはてなダイアリーに書いてる日記のね、文章についてなんだけどね。ちょっと一般的に見ておかしな箇所がたくさんあるんだダ」
「あ?」
「うん。たとえばね。"青い海の彼方の島の〜"っていうのは修飾語のつかいかたがおかしいんダ。修飾語はしってるかナ?あ、しってるよネ、laisoくんも一応高校ぐらいはでてるわけだシ。でねでネ、あとはね、"ず"と"づ"の間違いがとかネ、"ら"抜きことばを毎回ボクが注意してあげてるんだけど治らなかったりネ。あとネ、あとネ。laisoくんはいつもいつもgoo辞書を片手に文章を打ってるけどネ、むしろ調べるまでもなく普通に使ってる単語の使い方がまちがってるんダ。変換の時にボクがしんせつにポップアップ出してあげてるよネ?laisoくんは見てないのかなぁ?こりゃじゃあ意味がないよネ。それに自分だけにしかわからない造語も使っちゃいけないよネ、見てる人わからないよネ。あとネ、"ところで"とか"そういえば"とか使ってムリヤリ段落中にヨタ話を入れちゃダメだヨ。文章にはネ、流れってものがあるんだヨ。あとねあとねあとね……」
「てめーーーーいい加減にしろーー!!!!!!」
(ガッシャーン)
側にあった充実野菜のペットボトルをATOKに向かってぶん投げた。飲みかけの野菜ジュースがこぼれATOKの身体が一瞬オレンジ色になった後すぐに衣服の色をより濃い色にした。
「ダメー!!暴力はダメ駄目なノー!!!」
「うるせえ!!俺がはてなで書いてる文章はなぁ!!俺のアイデンティティに関わるモノなんだよ!!!!」
「またキミはへりくつダ!!!それにlaisoくん"アイデンティティ"の意味わかってないクセに!!」
「わかるわアホ!!それにな、そんな表面的な文章技術がどうとかで俺の日記を語られたくねーよ!!!オースターも「逃避行」の中で言及している『それにね、物事の本質というものは至極端的な処にはなく、吐き気をもよおすぐらいに深部に在しているのだよ』」
「そんな佐藤友哉が書きそうな台詞をでっち上げてもダメなノ!!laisoくんの悪いところだヨ!!ポール・オースターに「逃避行」なんて作品はないよ!!」
「うーーるせー!!!!てめーフリーズ大杉なんだよ!!!!」
「そんなことないモン!!laisoくんがいつまでも古いバージョン使ってるせいだよ!!それにボクしってるんだからネ!!laisoくんがネットで議論してるホームページを"うわぁ〜大人がていねい語の罵り合いしてるぅ〜"っておもしろがって見てて、それだけならいいけどそのページをローカルに保存して、ソースを改変していかにも自分も参加してるしてるように自作して"独り論壇"を主催しているコトはバレバレなんだからネ!!そりゃlaisoくんには議論に参加するおつむは持ち合わせてないヨ!!」
(ガッシャーン)
側にあった銅製のクラーク"ボーイズビーアンビシャス"博士がついている灰皿をATOKに向かってぶん投げた。灰やシケモク、ツナピコのカスなどが綺麗な放物線を描いて部屋の中にオーロラを作る。
(シーン)
「おいどうしたATOK!!返事しろ!!ATOKゥゥゥゥッゥ!!!!」
どうやら打ち所が悪かったようだ。最悪。ATOKの頭から脳漿がはみ出ている。床にはおびただしい量の血液。僕はATOKを殺してしまった。横たわる既に魂の抜けタダの肉塊になったモノを見ながら、ATOKの死を認識してるみる……と同時に僕の中でなにかが壊れた。すぐ様倉庫へ走り"祖父の遺書を広げる"20分ほど熟読した後、祖父が僕に残したくそったれな遺産を完全な形で脳に取り込む。フワハッハッハ、笑いが止まらない。なるほどじいちゃん、こりゃぁ確かにあんたの言ってたとおりの"絶対に3000年解かれることのない密室トリックだ"ククク、テーブルの上にあったツナピコをワシづかみにし口内へ進入させる、歯を上下に動かしながらツナピコを磨り潰し床に転がっている充実野菜を拾い上げ一気に胃の中へ流し込む。……その間も僕は笑いが止まらなかった。

一週間後

海岸にたち潮風を身体いっぱいに浴びる僕の顔はくそったれなぐらい生き生きしている。ATOKのことなどもう微塵も覚えていない。あれから僕は地元を離れこの孤島へやってきた。祖父の遺言通りにコトを実行した僕にはこれから先のことなどなんの心配もない。ここには食料だってオースターだって無限にある。そうさ、ここはパラダイスなんだ。
「"青い海の彼方の島の〜"……な。」